航空ファンによる航空・旅行ブログ

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【詳しく知りたい人向け】日本の航空会社の第三国への以遠権フライトが少ない意外な理由。

皆さんこんにちは。

楽しくヒコーキです。

今回は以前コメントでご質問いただいた「なぜ日本の航空会社は以遠権フライトが無いのか」ということについて、僕の意見を書いていこうと思います。

それではよろしくお願いします。

 

以遠権とはなにか、簡単に説明します

以遠権について簡単に説明します。

以遠権とは、第三国に向かう旅客や貨物を相手国で積み込むまたは、第三国からの旅客・貨物を相手国でおろす権利のことを示し、飛行の自由を保証する5つの商業航空権にて保証されています。

補足「5つの航空商業権とは

時は遡ること1994年、過去の戦争で航空機が使用されたことや、パリ条約により各国が領空主権を強く主張して、他国の領空を民間航空機が思うように飛行することができず、航空産業の発展に悪影響を与えていました。

そこでシカゴ条約では、各国の領空主権を認めつつ、商業航空権というものを5つ定めました。

第1の自由 領空を無着陸で飛行する自由(領空通過の自由)

第2の自由 運輸以外の目的(給油・緊急時)で着陸する自由(技術的着陸の自由)

第3の自由 航空機の登録国で積み込んだ貨客を積み降ろす自由(自国から相手国への輸送権)

第4の自由 航空機の登録国に向う貨客を積み込む自由(相手国から自国への輸送権)

第5の自由 協定外国(第三国)に向う貨客を積み込み、または第三国の領域からの貨客を積み降ろす権利(以遠権)

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例えば、日本の航空会社が日本から台湾を経由しシンガポールまで行く便を飛ばしたとすると、台湾~シンガポール間は以遠権フライトと呼ばれ、以遠権を行使したフライトとなります。

既に撤退してしまいましたが、デルタ航空シンガポールとかマニラの以遠権フライトは有名ですよね。以遠権フライトは、通常のフライトに比べて安く搭乗することができるので航空ファンの中には、以遠権フライトの激安運賃を狙って旅行する人もいます。

 

なぜ日本の航空会社は以遠権フライトを飛ばさないのか。

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日本の航空会社は、旅客便では以遠権を行使してのフライトはありません。

どうしてかと言うと、ANA日本航空がアライアンスに加盟していること知名度が無いこと、そもそも直行便の需要があることが関係していると思います。

一つずつ解説していきます。

 

アライアンスが関係しているから 

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まずアライアンスについてですが、大きなアライアンスだとスターアライアンスワンワールドスカイチームが挙げられます。

ANAスターアライアンスと呼ばれるアライアンスに加盟しており、日本航空ワンワールドアライアンスと呼ばれるアライアンスに加盟しています。スカイチームは日本の航空会社で加盟しているところはありません。

スターアライアンスは、ANA中国国際航空シンガポール航空ユナイテッド航空など国を代表する航空会社が加盟する傾向にあり、アライアンスの規模としては世界最大です。

ワンワールドは、日本航空カンタス航空アメリカン航空、ブリティッシュエアウェイズなどが加盟しています。特徴としては、アライアンスの縛りが強くなく加盟会社はアライアンスの垣根を超えた提携をよくしています。

スカイチームは、デルタ航空大韓航空エールフランスなどが加盟しています。規模はスターアライアンスに次いで2番目です。

このように、ANA日本航空はアライアンスを通じて世界中の航空会社と提携関係にあります。なので仲間同士で競争しないために、相手国から第三国までのフライトは同じアライアンスの相手国の航空会社が担うのがマナーとなります。

例えば、日本からタイのプーケットまで行くときは日本からバンコクまではANAバンコクからプーケットまではタイ航空(スターアライアンス)というふうになっています。また、乗客の利便性向上のために、プーケットまでの便と、東京までの便はANAや、タイ航空とコードシェア(共同運航)をしている場合もあります。(実際にこのフライトが共同運航をしているかは分かりません。)

よく、機内で「この便はANA100便東京行きです。またこの便は、スターアライアンスパートナーとのコードシェア便です。」といったアナウンスを聞くと思います。これが相手国(日本)からどこかまでの便を以遠権を行使せず、提携会社に譲った形になります。

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いわゆる「大人の事情」ってやつです。

なので、アライアンスに加盟していないLCCエミレーツ航空、その国に同じアライアンスの航空会社がなければ以遠権フライトをする場合があります。(デルタ航空とか)

アライアンスは共同運航したり、マイレージの提携をする場合で加盟することもありますが、経営が傾いた時に同盟会社やアライアンス本部から資金援助をしてもらえるメリットもあります。

日本航空は長きに渡ってどこのアライアンスにも加盟しない一匹狼だったんですが、以前同じく一匹狼だったスイス航空が資金難に陥り経営破綻したのを見て、ワンワールドアライアンスに加盟した背景もあります。

知名度が無い

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実例があるんですが、以前バニラエア(現Peach Aviation)が成田発台北経由ホーチミンシティ(ベトナム)行(From NRT Via TPE To SGN)のフライトを飛ばしたことがあります。

このフライトの場合、台北からホーチミンシティまでが以遠権フライトということになりますね。

しかし、この以遠権フライトはわずか1年半で撤退することになりました。

なぜならば、台湾の人は名前をよく知っている台湾の航空会社を、ホーチミンの人はベトナムの航空会社を利用することが多く、両国民はバニラエアの存在すら知らないという事になります。

なのでよほど安いなどのメリットがあるか、有名な航空会社に安く乗れる場合を除いて以遠権フライトは大きなリスクを伴います。

そのため、日系LCCは足元である日本国内線を充実させる事に徹しているように僕は見えます。

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〇〇だと日本の航空会社でも以遠権フライトをやっている!

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日本の航空会社は旅客では以遠権フライトをやっていませんが、貨物だと以遠権フライトを実施しています。

ANAホールディングスのANA Cargoの便でも、タイのバンコクからシンガポールまでを以遠権で飛ばしています。これは、ANA Cargo自体がスターアライアンスに加盟している訳ではないことや、中には航空会社を指名してチャーターという場合もあるからです。

細かい事になりますが、ANA Cargoは精密機器を輸送する認定みたいのを持っていて、精密機器でも安全で丁寧に輸送することができる会社として世界的に認められているので、指名も自ずと増えていると言えます。

また、日本人にはあまり馴染みがありませんが、日本貨物航空(Nippon Cargo)は世界的にとても有名な大手貨物航空会社です。日本貨物航空も、北米のアンカレッジを経由して世界中に貨物を届けています。

確か今は廃止されたと思いますが、かつて日本貨物航空では成田を飛び立った後に世界各国(アメリカ、ヨーロッパ、中国等)を経由し、地球を1周してから成田に戻るという「世界一周ルート」も存在しました。

なので、日本の航空会社は旅客での以遠権はあまり行使していないものの、貨物での以遠権はそれなりに行使していることになります。

まあ、一般旅客には貨物の以遠権など「知らんがな」で終わる話ですが…笑

今回はここまでにしようと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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