航空ファンによる航空・旅行ブログ

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【航空無線用語集】航空無線用語のバイブルを作りました。~タワー編~

航空無線は聴いてはいけない機密情報の塊のように思うかもしれません。

しかし、実際は航空無線を傍受することはまったく問題ありません。(もちろん法律にも触れない)

国土交通省の公式ページでも「エアバンド(航空無線)を聴いてみよう」みたいのがあります。

なので、受信機(一般のラジオ受信機より少し高性能の種類)さえあれば、ラジオ感覚で誰でも傍受することができます。
ただし、航空無線で知った内容を第三者に漏らすと、電波法に抵触する可能性があるので、あくまでも趣味の範囲で楽しんでください。

今回は、僕が航空管制用語の知識がない頃にほしかった「航空無線バイブル記事」を作ることにしました。どちらかと言うと、全くの初心者向けでは無く、実際に聴いていて浮かぶ疑問について書いています。

成田空港をイメージして架空無線内容を作ったのに、画像のほとんどが伊丹空港の風景であることはご容赦くださいませ。

タワー管制(飛行場管制)とは

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航空管制用語のバイブル1作目は、タワー管制(飛行場管制席)です。

タワー管制では、着陸機に対して着陸許可を発出したり、離陸機に対して「滑走路の手前で待機して下さい」などの指示や、離陸許可などを発出します。

また、飛行場半径9kmの距離(管制圏と言う)を空港ごとに定められた高度で飛行する航空機に対して、通過許可を発出したりします。
今回、通過許可については割愛します。

飛行機を見たり、撮影したりする上で最も傍受する価値のある周波数です。

離陸機に対する管制用語

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Narita Tower, All Nippon 2141, ready. (成田タワー、こちらANA2141便、離陸準備が完了しました)

タワーに初めてコンタクトする時に "Ready" と呼び出すパイロットが多くいます。
この際には、何が "Ready" なのかが明確にされていませんが、タワーと交信している際に"Ready"と言ったら「(離陸準備が)完了した」と承知されます。

そのほかに、Ready for Departure.って言い方もありますし、on your frequency(周波数を合わせました)とかwith youなんて言い方もあります。

 

All Nippon 2141, Narita Tower, Hold short of Runway 34-Left.(ANA2141便へこちらは成田タワー。滑走路34レフトの手前で待機して下さい。)

この時のshortは「達しない」「手前の」といった意味を持ちます。他にもshort final=着陸寸前などの意味もあるので、覚えておきましょう。

Hold short of runwayの指示を発出する際には、しばしば交通情報も提供されます。
以下、交通情報の例です。

Traffic on final.(到着機が最終進入上にいます)
Expect your departure after arrival(s).(あなたの離陸は着陸機の後だと予期して下さい)
You are number two for departure.(あなたは2番目の離陸です)

 

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All Nippon 2141, Runway 34-Left, Line up and Wait.(ANA2141便は滑走路34レフトに進入し、待機して下さい。)

Line up and Wait.は「滑走路に進入し、待機して下さい。まだ離陸をしてはいけません」という意味です。

滑走路に進入すると、大抵は2分以内に離陸許可が発出されます。

Line up and waitの指示は、後に離陸許可が発出される事が大前提なので、会社によっては、滑走路に進入してから2分以上過ぎても離陸許可が発出されない場合、誤進入した可能性を考慮し、管制に無線で確認することにしている会社もあります。

大抵の航空会社は、Line up and waitの指示を確認してから、機内のチャイムを2回か4回鳴らして、客室乗務員が離陸に向けたアナウンスをします。

 

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All Nippon 2141, wind 330 (degrees) at 8knots, Runway 34-Left, Cleared for Take-off.(ANA2141便へ、風は330度から8ノット。滑走路34レフトからの離陸を許可します。)

飛行機を見る上で一番気になる離陸許可です。
便名+風向風速+滑走路番号+離陸許可の順に発出されます。

離陸許可は指示ではなく、あくまでも許可ですが、許可の中でも大きな責任が伴う許可なので定型文を崩すことはありません。

イレギュラーの形として、

All Nippon 2141, arrival traffic is approaching to 3 miles on final, wind 300 at 8, Runway 34-Left, Cleared for Immediate Take-off.(ANA2141便、着陸機が滑走路から3マイルの位置に接近中です。風は300度から8ノット、滑走路34レフトから速やかに離陸して下さい。)

といったものがあります。

速やかに離陸するように促したところで、劇的に早く離陸するという訳ではありません。
しかし、航空機側に迅速な離陸(Immediate Take-off)ができない事情がある場合、迅速な離陸は不可能であると通報することによって、後続着陸機のパイロットのストレスを軽減できる面を秘めています。

 

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All Nippon 2141, contact Tokyo Departure 124.2.(ANA2141便は、東京出域管制席の周波数124.2MHzと交信して下さい。)

浮遊して車輪を格納したのを確認して、管制官は航空路までレーダー誘導を行う出域管制席と交信するように指示を出します。
この段階を持って、航空機は主に目視で指示を出している管制塔の管制官の監視下を離れ、レーダー室の管制官と交信します。

レーダー室の管制官は、航空機から無線で通報された便名(コールサイン)や高度と、レーダー上の便名(コールサイン)や高度を照らし合わせて、合致していれば「レーダーコンタクト(レーダーで捕捉しました)」と通報して目的地までのレーダー誘導・監視を始めます。

 

Contact departure 124.2, All Nippon 2141, Good day.(ANA2141便は、出域管制席の周波数124.2MHzと交信します。よい一日を。)

当記事はマニア向けなので、あえて管制方式基準には無い話をします。

最後の"Good day"は"Have a good day"を短縮した形です。
ネイティブ圏では、日常的にHave a good day.(もしくはevening)が使われているので、これ自体に深い意味は無いと思います。

ただ別れのあいさつが、"Good day"なのか"Good day,sir"なのか"So long"なのか"See you"なのかの違いを楽しむのもありだと思います。

詳しくはググってほしいんですが、それぞれは若干ニュアンスが違うので、ネイティブパイロットが、管制官に指示や許可を出していただいたと考えている(尊敬している)のか、管制官サービスされた(ゲストとホストの関係)と考えているのか、僕は勝手に妄想しています。

そんなことねーよと感じた場合は、マニアが変なこと考えてるなと、微笑ましくスルーしておいてください(笑)

着陸機に対する管制用語

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Narita Tower, Japan air 3, approaching  KOALA, runway 16-Right, Good afternoon.(成田飛行場管制席、こちら日本航空3便。滑走路は16ライトでポイントKOALA(コアラ)に接近中。)

ここではApproaching(接近中)の語を使用しましたが、Approachingの部分にはDeparted(通過した)やOver(過ぎた)を使用する場合もあります。

ポイントの名称以外にも、〇〇 miles on final of runway ✕✕.や"inbound"を使用する場合もあります。ここの部分の用語は、進入方式の違い以外にもパイロットの国籍や年代によって違う印象です。

 

Japan air 3, Narita Tower, runway 16-Right, wind 100 at 4knots, Continue approach. Expected one departure before you.(日本航空3便へこちらは成田飛行場管制席、滑走路16ライトへ進入を継続して下さい。風は100度から4ノットです。貴機の着陸の前に離陸機が1機あることを予期して下さい。)

レーダー室の管制官が発出した進入許可(Cleared for Approach)を継続する意味を持つ"Continue Approach"の指示を発出しました。
進入継続指示は、何らかの事由により着陸許可を発出できない場合に発出します。

この場合は、着陸する前に離陸機が居るみたいです。

ICAOの国際基準はアメリカの独自基準に比べて着陸許可を出すのが慎重なので、比較的Continue Approachを多用します。

逆にアメリカでは、滑走路横断中の機体がいても交通情報(Traffic is Crossing)を出した上で、着陸許可を発せられる基準になっています。

トラフィックの関係で着陸許可が着陸寸前になる時には、パイロットの不安を少しでも解消するために、着陸許可が寸前になる旨を予告する事があります。

Japan air 3, We have a departure Boeing 747, traffic is entering runway. Expected your landing clearance on short final.(日本航空3便へ、B747の離陸機があります。その離陸機は滑走路に進入中です。そのため、着陸許可は接地寸前になることを予期して下さい。)

 

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Japan air 3, caution wake turbulence from departing Boeing 747. Runway 16-Right, cleared to land, wind 140 at 3kt.(日本航空3便へ、離陸中のB747からの後方乱気流に注意して下さい。滑走路16ライトへの着陸を許可します。風は140度から3ノットです。)

航空機の翼端から発生する空気の乱れを後方乱気流と言い、機重が重い機体や低速時に威力が強い後方乱気流が発生する傾向にあります。

先行機の後方乱気流により後続機が操縦不能に陥った例や、墜落事故に至った例は少なくないので、規定に定められた間隔に接近した場合は、管制官が注意喚起を行うことになっています。

他にも、B747 is vacated runway…(B747が滑走路を離脱)やB747 is approaching to threshold.(B747が滑走路の末端に接近中)、ほぼ同義語にB747 is over approach light(B747進入灯を越しました)があります。

 

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Japan air 3, Turn Left and Contact ground 121.95.(日本航空3便は、滑走路を左折し、地上管制席の周波数121.95MHzと交信して下さい。)

着陸し順調に減速している事を確認すると、管制官は離脱する方向(Turn RightかTurn Left)や、離脱誘導路を指定して指示を出します。
離脱誘導路が一方向しかない場合には、いちいち離脱する方向を指示することはなく、単に"Contact Ground"だけの時もあります。

"Contact 〇〇"の後の周波数は、言うときと言わない時があります。

大きな空港の場合は、「東グラウンド」「西グラウンド」のように地上管制席が2つ以上あります。
地上管制席が2つ以上ある場合には周波数も2種類以上あるので、確認の意味を込めて周波数まで読み上げます。(他の管制席でも同じ事が言える)

 

ゴーアラウンド機に対する管制用語

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Tower, JA0001, Go-around.(タワー、JA0001、ゴーアラウンドします)

ゴーアラウンドする理由は様々ですが、コックピット側の(管制官が予期できない)理由でゴーアラウンドする場合には、パイロット側から「私、ゴーアラウンドします」と宣言をします。

 

JA0001 Roger, Climb and Maintain 6000, follow missed approach course.(JA0001へ、了解しました。6000フィートまで上昇・維持し、進入復行経路を追従して下さい。)

精密進入か非精密進入(視認以外)で進入する場合には、計器進入方式が許可された時に進入復行方式も同時に許可されるので、管制官から進入復行経路を指示されると、公示された方式に従って、進入復行経路をたどることになります。

空港によっては、騒音の関係で進入復行経路がとても複雑になっている場合もあります。

ゴーアラウンド後の指示は他にもあり、

JA0001 roger, Maintain 6000, continue fly runway heading.(JA0001へ、了解しました。6000フィートを維持し、そのまま滑走路と平行に飛行して下さい。)

場合によっては、このような進入復行経路を追従するのでは無く、管制官から針路を指示することもあります。

 

JA0001, Could you tell me the reason of Go-around?(JA0001へ、ゴーアラウンドした理由を私に教えていただけますか。)

ゴーアラウンドするからには、安全な運航に影響を与える「なにか」があるはずなので、管制官パイロットにゴーアラウンドした理由を聞きます。

内容によっては、後続機に対して注意喚起をすることもあります。

 

Ahhh, Due to BAD wind condition, JA0001.(えー、風の状況が悪かったからです。)

ウインドシアやマイクロバーストなど、墜落や失速の危険性のある風が観測された場合は、しっかりとレポートしますが、風に煽られてゴーアラウンドした等の理由では、wind conditionで済ませるパイロットがほとんどです。

 

航空無線のバイブル~タワー編~は以上です。

航空無線の魅力を語り尽くして最優秀賞に輝いた記事もあるので、航空無線オタクの皆さんは、ご家族ご友人に魅力を語る際の謳い文句(笑)に是非ご活用ください。↓

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