先日、全日本空輸やPeach Aviationを子会社に持つANAホールディングスが、中・長距離路線を担当する新たなLCCブランドを立ち上げると発表しました。
新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、世界各国は自国での感染症蔓延を防ぐため外国人の入国制限を行っています。また各国国内においても、国内線が都市封鎖を始めとする需要減少の影響を受けています。
IATA(=国際航空運送協会)は7月、世界の航空需要がコロナ前に戻るのは2024年になるとの見通しを発表しました。
今回は、この2つの発表から見えてくるポストコロナの航空需要を考えてみます。
エアージャパンでは足りない経費節減
ANAはアジアやリゾート路線で安定した利益を得るため、東南アジアなどの中距離国際線の一部をANAとは異なるAirJapanという航空会社の機材並びに乗務員で運航しています。
飛行機の見た目やサービスの内容はANA本体と殆ど変わらず、まるで合わせ鏡を見ている様です。しかし、人件費の安い外国人パイロットを雇用したり、その他の職でも給与をANA本体より低く設定して、運航にかける経費を圧縮しています。
先日発表された計画では、このAirJapanを母体として中距離国際線のLCC新ブランドを立ち上げるとの事でした。新ブランドが台頭するとAirJapanと競合するのは明らかですので、一定規模AirJapanの事業規模を縮小して、新ブランドのLCCに社員や機材を移行すること等が見込まれます。
24年に戻ってくるのは需要であり、従来の姿では無い
一番押さえるべき事は、2024年に戻ってくるのは需要だけであり、従来の姿では無いということです。
現在発表されている、2024年にはコロナ前と同等の需要が戻ってくるという事ですが、今回ANAホールディングスが発表した内容で、需要が戻ってくるという言葉の解釈の仕方を教えてくれた気がします。
要は、戻ってくるのは本当に需要だけ。戻ってくる需要の中身はコロナ前と全然違うということです。
ANAホールディングスの片野坂社長は、グループ全体のビジネスモデルを劇的に変革していくと発表しています。その中で打ち出された新ブランドのLCC立ち上げと、PeachとANAとの連携強化が、その最たる例です。
LCCはもともとビジネス客向けでは無く、観光客(更に分かりやすく言うと、レジャー客)をメインターゲットとして、経営しています。
ANAホールディングスとして、そのLCCに注力するという事は、コロナ後にはLCCの需要が増える、つまりビジネス客の需要が需要量の大半を締めていたコロナ前から、コロナ後は観光客の需要が需要量の割合を増やすと見込んでいる訳です。
これから、どんな空になるのかは想像できない
以前からLCCの台頭や大手のLCC化(大手が座席指定や受託手荷物を有料にしたりすること)という風潮がありましたが、コロナ禍で一層その流れが加速したように思えます。
現在の流れは既存の大手航空会社がLCCの新ブランドを立ち上げる形ですが、僕の知っている限り過去にこのような流れになった事はないので、これから日本の空がどの様に変わっていくのか全く想像できません。
前回の記事で書いたように、再び既得権益による包囲網が拡大して新興航空会社の参入ができなくなり、事実上の寡占状態になるのか、或いは新ブランドが不発になって新たな変革を求められる様になるのか、大手がLCCを手掛けて空を制覇する事のデメリットがどの様にして現れるのか、その多くは未知数です。
ここで言えることは、コロナ禍が収束しても今後数年間は不安定な航空情勢が続くと言うことです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。