空をクルマが飛ぶ。
マンガやアニメであった、あのシーンが実現するのはもう間近に迫っていると言えるでしょう。国を始め、各研究機関は空飛ぶクルマの実現に向けて開発を進めています。
そこで今日は、空飛ぶクルマが実現するにあたって問題となる論点を紐解いていこうと思います。
実現する可能性はあるのか
話を飛躍させる前に、そもそも空飛ぶクルマに実現可能性があるのか、明らかにしようと思います。
結論として、空飛ぶクルマは実現できます。
空飛ぶクルマの定義が明確ではないため、車輪に駆動力があるヘリコプターを空飛ぶクルマだと仮定すれば、現在あるヘリコプターの車輪に駆動力をつける事で、空飛ぶクルマの誕生です。
一方で市街地上空を空飛ぶクルマが右往左往に飛行するのはどうだと言われると、前述と同じ様に実現可能だとは言えません。これは法律の関係もありますが、力学的な問題もあります。(詳しくは後述)
これは業界全体の風潮としてでは無く、僕の勝手な予想なので1つの意見として参考程度にしてほしいと前置きした上で、空飛ぶクルマは水陸両用車(水陸両用バス)と似たような運用がされると考えています。
あくまでも主となる運用は事業者が行う。事業者が国の認可を受けた路線や空域で運航する、この形が最も実現可能性のある空飛ぶクルマです。
ダウンウォッシュ
マンガやアニメに出てくるような、一人乗りの空飛ぶクルマがビルの上空を走り回る(飛び回る)未来を創造する上で欠かせない論点がダウンウォッシュです。
逆説的に言えば、ダウンウォッシュさえ無くなれば空飛ぶクルマが画期的な乗り物になれると言い切ってもいいでしょう。
ダウンウォッシュを簡単に説明すると、ヘリコプターのプロペラ(メインローター)が回転すると地面向きに自然発生する強風の事です。
ドクターヘリを扱う作品で校庭や運動場に着陸するシーンがあると思います。その際、必ず消防車が地面に散水をしています。これは、ドクターヘリのダウンウォッシュが地表の土・砂を巻き上げて、視界不良になるのを防ぐために行っているのです。
文字で読むだけでは理解しにくいと思うので、雪でダウンウォッシュを視覚化した動画を貼っておきます。
ダウンウォッシュに周囲の人や建物が耐えられないので、ダウンウォッシュを扇風機並みに軽減できなければ、空飛ぶクルマの普及と画期的な活用はありえないと言えます。
ではダウンウォッシュを軽減することができるのか、という論点に移りますが、現時点での技術から言えば残念ながら無理です。
テロ等を防止するための規制
空飛ぶクルマが一般に普及すると、高層建物に激突する事故あるいはテロが発生するでしょう。それを防ぐための規制は必要不可欠です。
例えば、飛行禁止空域を設けて、その空域に侵入しないように制御するシステムを搭載するなど、空飛ぶクルマ側に何らかの規制をするか、操縦資格を厳格なものにするなど、操縦者側に何らかの規制をする事が考えられます。
その他の問題点
議論が必至な論点とは異なる、諸問題と言うべき問題点を挙げていきます。この問題点を解決したからと言って、空飛ぶクルマが実現するとは思えないので、このような形式にて書くことにしました。
僕が問題点としては最も大きな点だと考えている事は、空飛ぶクルマが事故を起こしてしまった際の事故調査です。
現在、航空機が事故を起こしてしまった場合、国土交通省外局(三条委員会)の運輸安全委員会が事故原因の究明、対策を講ずる事を求めています。空飛ぶクルマを航空機と同じ扱いをするのか、別の扱いとするのかは空飛ぶクルマの未来を左右するとも言えるかもしれません。
しかし、空飛ぶクルマの保安設備が分からない以上、今どちらの扱いが適しているかを論じるのは不可能に近く、また時期尚早であると言えるでしょう。
他の問題点を列挙します。
空飛ぶクルマの価格、メインテナンス、航空機との兼ね合い、現在航空法で無人航空機の飛行を禁止している空域(飛行場周辺や皇居など)の扱い、騒音、落下物の責任、免許制度(以下略)
空飛ぶクルマが普及する上で、ダウンウォッシュが障壁になる
話がAからBに進んでまたAに戻るような書き方になってしまいますが、やはり兎にも角にもダウンウォッシュの課題を解決しなければ、空飛ぶクルマの画期的な普及には至らないでしょう。
しかし、これが現在の技術では難しい。そもそも空気の流れを乱すためのローターなのに、下方にだけは乱させないなんて空気にしてみれば意味不明な話(…?)ですから、今後もダウンウォッシュは避けて通れないでしょう。
ではどうするべきか。もしかしたら、ローターの配置を工夫すれば解決するかもしれませんが、あえて、どうしてもダウンウォッシュの課題を解決できなかったとすると、やはり運航者の制限をして、行政が安全と数を制御する道になるのではないかと僕は考えます。
街中でも自由に飛び回れる空飛ぶクルマが実現すれば、新たな産業革命になります。しかし、どうやらその時代はまだ少し先のようです。
本記事で記した課題はもしかしたら誰かの創造力で簡単に解決できてしまうかもしれない。今日を機に、空飛ぶクルマについて、その実用性も含めた未来の姿を考えてみてはいかがでしょうか。
もちろん、未来の姿を本記事に記したことだけに縛られる必要はありません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。