「飛行機 怖い」ってキーワードで考えると真っ先に思い浮かぶのは墜落事故ですよね。ただ、墜落事故が発生する確率なんてことは一般人が議論するに値しない、要するに論外なほど低いものです。
ひとつの統計を出すと、LCCを含む日系の全航空会社は「平成」の約30年間1度も死亡事故を起こしていません。この記録はもちろん新元号下でも続いています。
なので今回は過去数年間、日系航空会社でも発生している乗客の生死にも関わる怖い事象を紹介します。
それではよろしくお願いします。
上空1万メートルの環境
旅客機が飛行する高度の上限は概ね43,000フィート(約13,000m)です。
旅客機が飛行する高度(巡航高度)は、出発前にパイロットと運航管理者が打ち合わせをし、燃料消費量が少なくて、揺れが少ない高度を選択しています。高度が低いと風向の変化が多いため、燃費が安定せず、揺れも発生しやすい傾向にあります。
そのため、旅客機が飛行する巡航高度は気流が安定している30,000~40,000フィートに集中します。(ちなみに1万メートルは32,000フィートです)
皆さんが普段上空1万メートルに滞在している際は、気圧・気温・酸素の整えられた機内に居ますが、上空1万メートルの外環境は人間が生きていけるような環境ではありません。
例えば富士山の標高は3,776Mですよね。山で罹りやすい病気や患いやすい症状は、主に高山病、特にひどいのが頭痛や吐き気、重症化すると意識障害が発生することで有名です。
旅客機の巡航高度は富士山の3倍かそれ以上なので、かなり劣悪な環境であることは容易に想像できますよね。
巡航中、普段は飛行機が2つ装備している与圧装置により、上空1万メートルでも生きていける環境に整えられていますが、稀にこの与圧装置が2つとも故障して機能しなくなることがあるんです。
ちなみに、2つの与圧装置はフライト毎に、実運用とバックアップ待機の役割を交換しています。
20秒で着用完了せよ。酸素マスクの重要性
"Oxygen masks will drop down when necessary."
ってかなり簡単に説明される酸素マスクですが、緊急時には酸素マスクが投下されてから20秒で装着完了できるように常に準備する必要があります。
先程書いたように、機内は2つの与圧装置により環境が整えられていますが、たまに与圧装置が2つともぶっ壊れることがあります。
そうすると、取り入れていた上空1万メートルの劣悪な空気を美化する装置がぶっ壊れることになり、機内は極度の低気圧、低酸素状態になってしまいます。
上空1万メートルを飛行中に与圧装置がぶっ壊れた際には、酸素マスク投下から約60秒、上空40,000フィート(約12,000メートル)飛行時に与圧装置がぶっ壊れた際には、酸素マスク投下から約20秒以内に着用しないと、徐々に身体が動かなくなり、場合によっては上空1万メートルでそのまま天からのお迎えが来てしまうことになります。
酸素マスクが突然投下されたらビックリするかもしれませんが、真っ先にマスクを鼻と口に着けて、その後ゴム紐を頭に回しサイズを調整するべきです。
酸素マスク着用時の鉄則に「子より親」って言葉があるのですが(今勝手に作りました)、酸素マスクが投下されたら、まずは親が着用して助からないといけないのです。もし、子どもを優先して着用させた場合、生死に関わるレッドラインの20秒は余裕で超えてしまいます。
そうすると、子は助かるけれども親は助からない可能性がありえます。子より親が先に着用し終えた際に、もし20秒を少し超えていても、速やかに子どもに着用させれば恐らく両名とも意識障害も無く、重大な後遺症も残らないまま命が助かるでしょう。
「子より親」という言葉こそは航空業界にありませんが、子どもよりも親が先に酸素マスクを着用することは広く共有されています。
急減圧が起きたらばどのように対処するのか
機内に搭載してある酸素の量は、すべての搭乗者が酸素マスクを使用すると、約10-15分ほどでなくなってしまいます。
なので、急減圧が発生するとパイロットは真っ先に管制官へ緊急状態にあることを宣言し、高度約3,000メートル(10,000か9,000フィート)、もしくは最低安全高度への緊急降下をリクエストします。降下率は元の高度や緊急度で変わりますが、場合によっては降下率7,000-8,000fpm(通常の倍)にも及ぶことがあります。
緊急降下時に妨げになる高い山がある北アメリカ(カナダだったと思う)の一部空域は、与圧装置が故障した際、緊急降下できないため避けられていると聞いたことがあります。
空調故障により客室高度の変化が激しくなり、また普段よりも急降下することから、いつも飛行機に乗っていて耳が詰まることがない人でも、耳が詰まることがあります。この際、客室高度は手ぶれ補正の効かないカメラみたいな感じで急変化します。
緊急降下の後、安全な高度約3,000メートルに達すると、機長から酸素マスクを外して良い旨を伝えられるはずです。
巡航中の客室高度は与圧により高度約3,000メートルに保たれています。なので、与圧装置がぶっ壊れても高度3,000メートル以下まで降下すれば、酸素マスクを外しても何ら問題ありません。また、与圧装置の故障だけなら、海などに不時着することはありませんし、場合によっては緊急降下終了時に管制上の優先権を取り消し、緊急着陸を実施しない可能性もあリます。
もし急減圧により緊急着陸をしたとしても、エンジンや車輪にはまっったく問題はないので、乗客視点での着陸はいつもと変わりません。衝撃防止姿勢もとらないでしょう。
つまり、急減圧が発生し酸素マスクが投下されたら、
- 酸素マスクを一度下に引っ張り、その後口に当て、サイズを調節する。*1
- 緊急降下が実施されるので耳詰まりを起こす可能性が高い。耳詰まりになってしまった場合は、キャンディをなめたり、耳抜きをする。
- 機長から酸素マスクを外していい旨の指示があったら、速やかに酸素マスクを外す。(そのまま着用し続けると、いずれ酸素が切れるので辛くなります)
- 後はいつも通りの飛行・着陸なので、変に身構えない。
- 数日後に身体の不調が現れることもあるので、着陸後も体調(特に耳痛や頭痛)に気を配る。
これだけマスターしておけば、いきなり酸素マスクが投下されても動じずに生き残ることができます。酸素マスクを着用するまでが勝負なので、真っ先にマスクを着用するようにしましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。