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【速報】宇都宮市で日本初のLRT(次世代型路面電車)新設が実現へ

栃木県の県庁所在地で、人口約51万人を誇り北関東最大の都市でもある宇都宮市

宇都宮市では以前よりLRT(次世代型路面電車)の新設が議論されていましたが、先日行われた任期満了に伴う宇都宮市長選挙で、今までLRT新設を推進してきた現職の佐藤栄一市長が5選を果たしたことにより、宇都宮市に日本初のLRT新設が成される見込みです。

大勝してLRT反対候補を退ける

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現職市長の任期満了に伴う宇都宮市長選挙は11月15日、同じく現職知事の任期満了に伴う栃木県知事選と同日に執行され、即日開票されました。

4年前の選挙では、新人で野党が支援するLRT反対候補と現職で自民公明が推薦するLRT推進候補が一騎打ちの情勢となりました。投票率41.53%、当選は現職の佐藤栄一市長でしたが、得票数は新人が83,634票(得票率48.21%)、現職(当)が89,840票(得票率51.79%)と僅差での勝利、辛勝とも言える結果です。

宇都宮市は4年前に当選した佐藤市長の舵取りで、今では既に道路工事を含んだLRTの軌道や電停の整備が始まっており、車両も間もなくして完成する見込みです。

そんな状況で迎えた今回の市長選もLRT新設が選挙の争点となりました。立候補した新人で立憲民主、共産、社民が推薦する候補者は、コロナ禍においてLRTを今新設する必要は無い。財源を新型コロナ対策に回すべきであると主張。

一方の現職で自民公明が推薦する佐藤候補は、高齢化社会を迎える未来を見据え、車が無くても不自由無く生活出来る、LRTを中心とした公共交通機関で市内どこにでも移動できるネットワーク型コンパクトシティを政策として掲げました。

11月15日に投票、即日開票されて結果は同日午後11時35分に確定。

投票率は前回より0.46%低い41.07%、得票数は新人が59,237票(得票率34.39%)現職が113,025票(得票率65.61%)と前回の選挙戦と比べ、佐藤氏陣営は大勝したと言えます。

あくまで僕の短絡的分析ですが、投票率が前回よりも下がった一方、現職の佐藤市長は前回の選挙戦より約23,000票ほど得票を伸ばしました。一度LRT反対の票を投じた有権者が今回は賛成の現職に票を投じたという例がいくつあるか分かりませんが、有権者の佐藤市長に対する支持が根強く、この4年でも拡大したと言えます。

宇都宮市においてLRT(次世代型路面電車)が果たす役割とは

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選挙戦では同じく5選を目指す福田知事と共闘した。選挙はいずれも現職が大差で当選。

宇都宮市は南北にJR宇都宮線東北本線)と東武宇都宮線が通っているものの、東西の移動手段はバスしかありません。

バスも家の近くまで来るはずも無く、郊外ではバス停まで行くにも車が無いと行けない現実もあります。いわゆる、地方では車が無いと生活できないの典型例です。

コロナ前には高齢者ドライバーによる交通事故が社会問題となり、高齢者の運転免許証自主返納が社会の風潮として良しとされていました。僕はこの風潮が100%正しいとは思いませんが、そもそも世の中には様々な事情で車を運転出来ない人(高校生等の学生も含む)、運転が苦手な人だってたくさんいます。

高齢者でも自分で運転したくて、当局が定める基準を満たした運転免許証を保有するならば、運転する権利その物を規制して剥奪するべきでは無い一方で、自分の運転技術に不安を抱きながらも車を運転しないとスーパーまで行けない、病院まで行けない、知人と交流することもできないので、仕方が無く運転している人も多数居るはずです。

その様な交通弱者(=移動制約者)が安心して文化的な生活を送るために佐藤市長が打ち出した政策はネットワーク型コンパクトシティと言うものです。

佐藤市長が目指す、ネットワーク型コンパクトシティとは

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宇都宮市ホームページより

僕も佐藤市長が目指すネットワーク型コンパクトシティの全貌を知っているわけではありませんが、市の資料を見る限り、イメージとしてはハブアンドスポーク方式に似ているのかなと見受けました。

宇都宮市内の東西移動の需要はかなりあって、宇都宮駅では毎日約2,100本のバスが出入りしています。宇都宮駅を利用した方ならお分かりかも知れませんが、宇都宮駅に着いたときの第一印象として餃子屋とバスの数が尋常じゃないと思うはずです。

ただ、いくらバスに乗れば目的地にたどり着けると言われても、あの本数と土地勘のない場所で住宅地やローカル地名が行先のバスに乗るのは勇気が必要です。

例えばJR宇都宮駅から、より市の中心地に近い東武宇都宮駅付近まで移動する場合も徒歩では時間がかかります。移動手段はバスしかないので、市民にどのバスに乗れば良いのか訪ねたとしても、大抵の場合は「ほとんどのバスは東武駅まで行くよ」とだけ返されます。

このようにバスでは利便性の限界がありますが、LRTならばどうでしょうか。法律上の違いはあるものの、運行の仕組みや電停の利用は電車と変わりません。また、LRTは法律で守られた道路上の専用軌道を走行するため、バス以上の定時性・速達性が担保されます。

市の東西を利便性・定時性・速達性・輸送力に優れたLRTで高速大量輸送し、主な電停に設けるトランジットセンターにて、バスやデマンドタクシー(乗り合いタクシーの様なもの)と乗り継ぎ、今よりもきめ細やかな公共交通網を市内に張り巡らせる、大まかに言うとこの様な構想をネットワーク型コンパクトシティと呼んでいます。

LRT西側新設は今後の佐藤市長の手腕に問われる

宇都宮市は2022年に宇都宮駅から清原工業団地テクノポリスまで行く、いわゆる東ルートが先行して建設されています。しかし、宇都宮市にはもう一つの西ルートなる構想も存在します。

先の選挙戦で5選を果たした佐藤市長は、今回の任期中に西ルートの道筋、つまり国土交通大臣からLRT事業に係る工事施行認可を取得したいとしています。佐藤市長の任期は2024年までなので、2022年にLRT東ルートが開業して、市民に「これは便利な乗り物だ」と理解を得られれば、任期中に西ルート建設施行認可をスムーズに取得できるでしょう。

しかし、中途半端な結果となった場合、西ルートは夢物語に終わるに決まっています。

市の資料や他の路面電車成功例を見る限り、佐藤市長の政策にあるネットワーク型コンパクトシティは「これは便利な乗り物だ」と市民に受け入れられる素質を十分に秘めていると思います。

LRTのT(Transit)を活かして、路面電車だけで終わらず、路面電車に付随して地域交通を発展させる事は、宇都宮市のような人口が伴っている都市には最適解且つ、LRTの真髄を付いていると言えます。

日本初の試みであるだけに、宇都宮市と似た境遇にある都市の未来も決める注目事業です。開業間近まで来たからには、宇都宮市民の利益、自慢になるLRTを作り上げてほしいと外野ながら切に願います。

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