航空ファンによる航空・旅行ブログ

このブログの面白みがわかる人は、きっと飛行機好きです。

ヘリコプターが旅客機よりも墜落しやすい理由。

皆さんこんにちは。

楽しくヒコーキです。

今回は、最近ヘリコプターの墜落が多くニュースになっているので、ヘリコプターがどうして旅客機よりも墜落しやすいのかについて書いていきます。

それではよろしくお願いします。

 

NBA選手コービー、福島県郡山市

f:id:airplanelove:20200201202944j:plain

日本のニュースでも取り上げられましたが、元NBAコービー・ブライアントらが搭乗したヘリコプターがアメリカで墜落し、コービーを含んだ全ての搭乗者が死亡するという大変痛ましく悲しい航空事故がありました。

また、福島県郡山市でもヘリコプターが不時着したと通報があったようです。(編集時詳細不明)

ヘリコプターの墜落事故は日本でかなり起きており、直近の2017年には長野県松本市鉢伏山山中に長野県消防防災航空センターのヘリコプターが墜落し、機長の他乗員8名が搭乗していましたが搭乗者9名全員が死亡しました。

また、2015年3月には三重県北牟婁郡紀北町付近で物資の輸送をしたヘリコプターが墜落し、機長と整備士の2名が死亡しました。さらに同年11月には、群馬県安中市松井田町付近に個人所有のヘリコプターが墜落し機長の他、同乗者1名が搭乗していましたが2名とも死亡しました。

一般旅客が搭乗するような旅客機(ANA,JALとか)では、平成の約30年間一度も死亡事故を起こしていない本邦航空会社ですが、ヘリコプターになった瞬間多くの死亡事故が起こっていることがわかります。

ヘリコプターと旅客機で何が違うのかを検証し、ヘリコプターが墜落しやすい理由を探っていきます。

 

ヘリコプターの多くが行っている有視界飛行方式

f:id:airplanelove:20200201203005j:plain

ヘリコプターの墜落事故が発生する理由のほとんどは、視界不良、天候不良による地表や山の側面への激突、または電線鉄塔などへの接触です。

日本上空は寒気団と暖気団がぶつかり合う場所であるため、年中短時間の視界不良や悪天候に見舞われます。特に夏季はあちらこちらで霧が発生し視界が短時間で極端に悪化します。

現在、ヘリコプターの多くが行っている有視界飛行方式(VFR)は、パイロットが地表・海面や、雲、鉄塔などの障害物から決められた距離をとって飛行します。そのため、視界が悪くなり地表・海面が見えなくなってしまう(この事を計器気象状態と言う)と、有視界飛行方式で飛行することはできません。

なので、パイロットは地表・海面が見える高度まで降下します。

その降下している最中に、雲や霧の合間から突然山の斜面があらわれ、その斜面にローター(プロペラ)が激突していまい失速・墜落となってしまうケースが多くあります。また、降下中に電線に引っかかり同じくローターが動かなくなり失速・墜落という事例もあります。

標高の高い山の斜面では、付近で上昇気流が発生しており天候が変わりやすく、気流が乱れているため操縦の難易度が上がることも想定されます。そのため、遭難者救助などの任務は常に危険と隣り合わせの状態でありことが言えます。

もちろん、機体トラブルなどが原因の事故もありますが、ヘリコプターによる死亡事故の場合は多くの事故がこのような理由によって発生していると僕は考えています。

 

テールローターが無いと、ヘリはぐるぐる回転する?!

f:id:airplanelove:20191030212346j:plain

※この手の類(ヘリコプターや技術系)は苦手分野なので、その点ご容赦ください。

ヘリコプターには2つ以上のプロペラがついています。ひとつのプロペラだけを回すと、機体の姿勢や針路が安定せずぐるぐる回転してしまうので、もうひとつの小さなプロペラを回して回転をトリム(調整)したり、同じ大きさのプロペラを反対に回して回転を相殺して姿勢や針路を保っています。

大抵のヘリコプターは、機体後部に小さなプロペラ(テールローター)がついていてトリムしていますが、CH-47などの輸送ヘリは同等サイズのローターをそれぞれ逆向きに回して相殺しています。

大抵のヘリコプターについているテールローターを中心に話を進めますが、このテールローターが故障したり、樹木などの障害物に接触して機能を失えば機体はバランスを崩してしまい、最悪の場合は墜落してしまうことがあります。

 

技術や法律が発達するも、なお無くならない。

f:id:airplanelove:20200106194401j:plain

実際に発生していないので誰も分かりませんが、発達した気象予報により防げた航空事故は数多くあると思います。しかし、どんなに予報精度が向上しても自然に勝ることはできず、悪天候に見舞われたことが起因の有視界飛行方式で飛行する航空機の事故は無くなりません。

「旅客機みたいに全て計器飛行方式で飛ばせばいい!」と考える人もいるとは思いますが、狭いヘリコプターの機内に計器飛行方式(IFR)をする際に義務付けられている装備を搭載することは不可能です。繰り返します。現行の全ヘリコプターにその装備はできません。

確かに、計器飛行方式に対応しているヘリコプターならば、有視界飛行方式での飛行中に急な悪天候に遭遇しても、管制に計器飛行方式でのフライトプラン(飛行計画)を提出し、管制当局が修正し管制承認を発出するまでの時間をやり過ごすことができれば、旅客機と同じく計器飛行方式で難なく雲の中を飛行して近隣空港に着陸するでしょう。

ただし、先述の通り多くのヘリコプターは計器飛行方式で飛行することはできません。運がいい場合(管制官に余裕がある場合)は管制官から「特別有視界飛行方式(SVFR=スペシャVFR)」を許可され、パイロットが要請すれば管制官がレーダー誘導してくれて空港までたどり着くでしょう。

特別有視界飛行方式(SVFR)で助かった命の数も計り知れないものだと思います。

(特別有視界飛行方式とは、航空法第九十四条「計器気象状態における飛行」のただし書きによるものです。詳細はページ下へ。)

 

ただ、全てのケースで助かるとは限りません。高精度の天気予報や特別有視界飛行方式など、墜落しないようにするフィルターは何重にもなっていますが、完全・完璧で無いことはご理解いただけると思います。

それにより発生した事故で死者が出てしまうことは、とても痛ましく思います。しかし、安全性と利便性をバランス良く取ると現行の方式に勝るものは今の世界では無いでしょう。

多くの命が限界にまで追い込まれて、苦しみながら失われるような事故が少しでも少なくなることを願うとともに、より一層の技術向上を願ってやみません。

 

今回はここまでにしようと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 航空法 第九十四条

(計器気象状態における飛行)

航空機は、計器気象状態においては、航空交通管制区航空交通管制圏又は航空交通情報圏にあつては計器飛行方式により飛行しなければならず、その他の空域にあつては飛行してはならない。ただし、予測することができない急激な天候の悪化その他のやむを得ない事由がある場合又は国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

 (この場合の国土交通大臣航空管制官等を意味し、国交省に出向き大臣に直接許可をもらうと言う意味ではありません。)

 

要するに、計器飛行方式で飛ばなきゃいけないところでも、やむを得ない事由がある時の一時的な緊急措置や、管制官の許可がある場合は有視界飛行方式で飛んでいいよってことで、この「ただし書き」により実施される有視界飛行方式のことを、特別有視界飛行方式(スペシャVFR)と言います。

特別有視界飛行方式で飛行するパイロットは地表・水面さえ見えていれば、あとは管制官に任せて飛行することができ、他機との間隔は管制官が確保します。