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【空の教科書】航空会社と既得権益

得権益とは、ある社会的集団が歴史的経緯により維持している権益のこと。

この言葉は多くの組織に言えることでありますが、昨今では2020年9月16日から始まった菅義偉内閣の中心である菅義偉内閣総理大臣河野太郎国務大臣が音頭を取り、既得権益を打破するという政策を打ち立てたことは、記憶に新しいと思います。

今回は、既得権益に関連付けて、かつて日本の航空産業で起こった新興航空会社と大手航空会社との攻防について書いていきます。

新興航空会社の台頭

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時は遡ること1990年代の終わり。

このとき日本国内線は、日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)、日本エアシステム(JAS)の寡占状態であり、航空運賃が高止まりし続ける時代が長らく続いていました。

その既得権益に立ち向かうべく立ち上がったのが、スカイマークエアライズ(現 スカイマーク)と北海道国際航空(現 AIRDO)の2社です。

運輸省(現 国土交通省)が既得権益による寡占状態と航空運賃の高止まりを問題視して規制緩和を実施したことや、当時新規参入会社に発着枠を優先的に付与する様に求める流れもあったことから、就航するまでは大きな問題なく両社とも進んでいきます。

スカイマークは1998年9月19日に羽田=福岡路線、AIRDOは同年の12月20日に新千歳=羽田路線でそれぞれ就航すると同時に、大手3社による寡占状態に歴史的なピリオドを打った形になります。

ただし既得権益の打破は簡単なものではありません。ここから大手航空会社の逆襲が始まります。

大手航空会社が大きな力を武器に逆襲

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大手航空会社の高い運賃をよそに、新興航空会社は現在のLCCに繋がるビジネスモデルで従来の半額近い低運賃を実現して、両社とも参入した路線の搭乗率で優位に立っていました。

ここまでは、新興航空会社が成功しているように見えますが、ここから両社は既得権益の逆襲に遭い、経営破綻にまで追い込まれてしまいます。

このストーリーにはある事がまだ始まっていません。

そのある事とは、一般市場でも当たり前に行われている価格競争です

既得権益の大手航空会社は、スカイマークとAIRDOが参入した路線の運賃を大幅に値引きし、両社が「大手より価格が安いですよ〜」とは言えない所まで追い込みました。

大手にやられ、迷走する新興航空会社

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価格面で既得権益と対抗できなくなった新興航空会社は、見る見るうちに経営難に陥り、また、新規参入で不慣れなことから運賃設定や需要量の読みが外れたこと、さらには2001年に発生した同時多発テロによる航空機離れが影響します。

スカイマークは経営体制を改め、利益重視の安定路線を選択して難を乗り越えますが、北海道という1地域で事業を行っているAIRDOは2002年に経営破綻し、民事再生法を申請しました。

宮崎を拠点にするスカイネットアジア航空(現 ソラシドエア)も、スカイマークとAIRDOの後を追って新規参入しましたが、2004年に産業再生機構の経営支援を受けることになります。

更にさらに、AIRDOとソラシドエアが壁に当たっている最中に新規参入したのが、漆黒の機体で一際目を引くスターフライヤーです。

スターフライヤーは公的機関の援助こそは受けていませんが、24時間離発着できる北九州空港(スターフライヤー拠点空港)の利点を最大限活かそうと深夜1時に到着する便を設定したり、先々の需要を見込んでリース機を導入したものの、発着枠が与えられず予備機として地上に居続けるなど、攻めの戦略が上手くいかず、決して安定した経営とは言い難い状況が続いていました。

ANAコードシェア包囲網

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ここまで記したように、規制緩和により多くの地方に拠点を置いた地域密着型航空会社(ここまで新興航空会社にスカイマークを含めて書いてきたので、区別するために、地方に拠点を置いた航空会社を地域密着型航空会社とします)が新たに航空業界に参入しましたが、既得権益の力の強さに圧倒されて経営難に立たされてしまいました。

しかし、経営難に立たされている地域密着型航空会社を救った救世主とも言える会社は同じ会社だったのです。

その会社の正体は、つい最近まで敵の既得権益として君臨していた全日本空輸(ANA)でした。

スカイマークは航空会社で無い別会社の傘下に入り立て直しを図りますが、地域密着型航空会社のエアドゥ、スターフライヤー、ソラシドエアの3社はANAに支援を求めて経営立て直しの道を歩むことになりました。

新興航空会社3社としては、自らが経営難に陥った大きな原因でもある航空業界での経験不足や知識不足を改善できること、また、ANAと提携する事でANA知名度に便乗して、企業名の宣伝や売り上げの増加が期待できました。

なので、ANAの一方的な利益追求ではないものの、規制緩和を皮切りに既得権益の敵兵として乗り込んだ新興航空会社は、いつの間にか既得権益に支配される形になってしまいます。

【結論】果たして、既得権益を打破したと言えるのか

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既得権益の寡占を是正しようと実施した規制緩和により、新興航空会社が日本の空を飛び始めた所までは良かったのですが、参入した新興航空会社は気づけば既得権益支配下にあります。

ここで生まれる素朴な疑問は、果たして規制緩和により既得権益を打破したと言えるのか、という事です。大袈裟に表現すれば、既得権益を弱体化させるために送り込んだ敵兵が呆気なく反撃され、既得権益の味方になってしまったのですから。

分析として、新興航空会社が参入した路線の航空運賃が下がった事から、最終的にANA側になってしまったものの、エアドゥ、スターフライヤー、ソラシドエアが影響を与えたでしょう。

しかし、既得権益を打破した主役は地域密着型航空会社3社では無く、スカイマークであると僕は思います。

スカイマークは今でも独立系航空会社として、どの航空会社とも共同運航を行っていない中立な立場で、“大手の暴走“を抑制しています。

同時期に新規参入した航空会社は皆、ANAの息がかかっていますが、片やスカイマークは独自路線を死守した結果、国内線においては対等とまでは言えないものの、大手航空会社が無視できない存在にまで成長しています。

正直な感想を言うと、色々と迷走したのによく生き残れたなと思うほど、既得権益には無い破天荒な経営をスカイマークはしてきました。しかし、既得権益と対峙するならばこれくらい破天荒なやり方をしないと生き残れないという事を示しているようにも思えます。

外野が論評する事ではありませんが、出る杭は打たれる 出過ぎた杭は打たれないとは、正に航空業界の関係を言うのではないか、そう彷彿させます。

だいぶ話が逸れたので原点回帰して結論を述べますと、新興航空会社(スカイマーク+地域密着型航空会社)が既得権益を打破する事は出来なかった一方、大手航空会社の市場寡占は是正できた。新興航空会社が参入した事により、大手航空会社の航空運賃の価格低下を引き出す事ができた。この2つのは言えます。

ポストコロナの航空会社は、再び激動の時を迎えることになるのでしょうか。いや、もしかしたら激動は既に始まっているかもしれません。

既得権益と新興航空会社の今後は引き続き見守っていきたいものです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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