こんにちは。楽しくヒコーキです。
今回は、飛行機が欠航する風速の目安をお伝えします。
もし「明日搭乗予定の便が飛ぶか不安だ」という状況なら、この記事を読めば飛行機が飛ぶかどうかの予想だけでなく、飛行機について今の何倍も詳しくなる事をここでお約束いたします。
それではよろしくお願いします。
本記事の結論
記事の作成者としては、全文を読んでいただきたいのですが、読者様の利便性を一番に考えて、本記事が至る結論について箇条書きでまとめました。
詳しい解説や論拠は各章を参考にしてください。
もし、箇条書きの内容だけで理解できたという方は、台風などの悪天候時に欠航より高確率で発生する機材変更についての記事を続いて読んでください。
機材変更は最悪の場合、自分だけ飛行機に乗れなくなってしまいます。
読んでおいて損はありません。
結論
- 滑走路の方角に対して向かい風ならば、ひと安心
- 雨天時、横風が25kt(風速約12-13m/s)を超えると欠航の可能性が出てくる
- 道路閉鎖や鉄道運休の場合は、駐機場(ランプ)業務も安全に行う事ができないため欠航する可能性大
向かい風が強い分は問題ない!?
飛行機は翼に揚力(ようりょく)を発生させて飛行しています。
飛行機の翼に発生する揚力は、機首から尾翼(前から後ろ)に流れる風によって発生します。
そのため、離着陸時は短い距離で完結できるように、揚力が発生しやすい向かい風で行っています。つまり、向かい風が風速5m(約10kt)だろうが、風速15m(約30kt)だろうが飛行に重大な影響を与えません。
様々なマニュアルにも、「追い風制限値」や「横風制限値」というものは存在しますが、「向かい風制限値」は存在しません。
ちなみに滑走路が乾いている状態で追い風成分10kt(風速約5m)までなら、現行航空機の性能上、安全に離発着できるとされています。
以前、中部国際空港で飛行機を見ていた際、管制官から飛行機に対して与えられた情報が向かい風34kt(風速約17m)でも、問題無く着陸していました。
なので、出発あるいは到着する空港の滑走路がどの方向を向いているか確認し、その滑走路が向いている方向から風が吹く予報なら、まずはひと安心です。
あまり気にする必要はないんですが、飛行場で風速が25m/sを超える風が数分間継続的に観測された場合は、管制塔の管制官に避難命令が出ます。*1
ただ、風速25m/sになると流石に地上業務に支障が出るので、飛行機は既に欠航しています。
そのため管制官が避難したことによる直接的な影響はほぼ無いんですが、管制官がいなくなってしまうので、空港としての機能を一時的に失うことになります。(緊急状態の航空機を受け入れることができなくなります)
最近だと、2016年に成田空港で台風9号による強風が避難基準を上回ったため、約45分間管制業務が停止したことがあります。
羽田空港の管制塔は高さは115.7メートルなので、1フロアの高さを3.5mとしたビル階換算をすると、33階分にも及びます。
その高さの建物が強風にさらされた状態で、中の人が責任を持って業務を遂行することは困難ですからね。
よく制限オーバーするので要注意。「横風制限」とは
向かい風ならそんなに心配する必要が無いことは分かっていただけましたね。
それでは次に、飛行機の天敵とも言える横風について書いていきます。
横風制限値は滑走路の立地・設備により異なることがありますが、滑走路面が濡れている状態だと、日系外資系問わず大抵の会社は横風制限を25ktにしています。
滑走路面が乾いている場合は、航空機製造会社の基準に基づき、概ね34-35ktが横風制限値となります。
離陸時に横風制限値を超えていることが管制官からの情報で分かった場合は、制限値以下になるまで滑走路前で待機します。
また、回復の見込みが立たない場合はGTB(グラウンド・ターン・バック)と言って、駐機場に戻り、大幅な遅延か、場合によっては欠航になります。
着陸時に横風制限値を超えていたら、操縦士はゴーアラウンド(着陸復行)を実施し、こちらも回復の見込みが立たない場合は、飛行計画で定めた代替着陸空港へと向かいます。
羽田や成田などの大空港でダイバート便が多数発生した場合は、福岡にある航空交通管理センター(ATMC)が、飛行計画で定めた空港にとらわれず、国内外の受け入れ可能空港に向かうことを指示します。
✈ここから次の章までは、ただのうんちくなので飛ばしても構いません✈
羽田など混雑空港でダイバートが多数発生した場合は、航空交通管理センター(ATMC、ATMセンター)がダイバート先を決定します。
航空交通管理センターが決めた行き先は当たりハズレがあり、Twitterとかでは〇〇便は当たりくじを引いたとか、〇〇便はハズレくじだったなどと話題になることもあります。
例えば、成田空港が使えなくなり目的地変更をすると、当たりの場合はすぐ近くの羽田空港で、ハズレの場合は韓国のソウル仁川国際空港とかって場合もあります。
飛行機が飛ぶかどうかの前に、鉄道・道路の状況を確認!
これは、低視程(視界が悪い)状況でも言えることですが、鉄道が運休になっていたり高速道路が通行止めになっているような気象状況であれば、飛行機は飛びません。
なぜかと言うと、飛行機はグランドハンドリングと呼ばれる、受託手荷物の扱いや飛行機外部の安全確保を主とする業務ができない状態では、出発することができないからです。
グランドハンドリングは、当たり前ながら雨風を遮るものがない駐機場で行います。
道路が通行止めのような風の中、チェックインカウンターで預けた荷物のコンテナを飛行機まで運搬できますか。
鉄道が運休になるほど視界が悪い中、安全確保ができますか。
できないですよね。
なので、飛行機が欠航するかどうかは、道路が通行止めになるか、鉄道が運休するか、とったものと似たような判断になると思います。
台風による欠航を攻略!
まとめ
- 滑走路の方角に対して向かい風ならば、ひと安心
- 雨天時、横風が25kt(風速約12-13m/s)を超えると欠航の可能性が出てくる
- 道路閉鎖や鉄道運休の場合は、駐機場(ランプ)業務も安全に行う事ができないため欠航する可能性大
ここまで書いたことにあと一つだけ付け加えると、天候不良による欠航は不可抗力なので、航空会社は旅客が目的地に連れて行く以外の補償(ホテル代を出すとか)は契約上の義務ではありません。
旅客を目的地に連れて行くことが航空会社の負う義務なので、代替便が翌日以降になった場合のホテルの手配くらいは頼めばやってくれるとは思いますが、その際に発生した費用は自分で負担するしかありません。
心配の場合は保険に入っておくと安心かもしれません。
今回はここまでにしようと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
*1:この場合の風速25m/sは平均風速であり、ニュース等で伝えられる「最大瞬間風速」の値とは大きく異なります。