「飛行機の遅延」と言っても様々な種類があります。航空会社が起因の機材故障やシステムトラブル、航空会社としては不可抗力で発生する空港閉鎖や悪天候、そしてたまに発生する「管制指示」による遅延。
今回は、単純そうに見えて奥が深い管制指示による遅延について詳しく書いていきます。
それではよろしくお願いします。
空は広い！夢がある！だけど飛行機は整列。
上の画像はある日の羽田空港周辺を飛んでいる飛行機の位置情報です。
伊豆半島・大島付近から房総半島付近を飛行し、羽田空港に着陸する飛行機の列ができています。
関東の空は果てしないほど広いのに、羽田空港に向けて多くの飛行機が同じルートを飛行しています。一体なぜ整列しているのか不思議に思いますよね。
なぜかというと、航空管制官が無線を使って各航空機間の間隔を確保するために整列させているからです。
飛行機は上空で止まれません→上空で旋回待機すると燃料を無駄使いすることに
飛行機は時刻表上の出発時刻の他に、出発制御時刻(EDCT=Expected Departure Clearance Time)が決められており、各航空機はこのEDCTより後に車輪が滑走路を離れるようにします。
この出発制御時刻は、航空機側が勝手に拒否できない管制指示にあたり、管制官側から取り消されない限り、無視できない時間指定になります。
そもそも、どうしてEDCTが設けられているかと言うと、近年、航空(ジェット)燃料の高騰や地球温暖化の深刻さが課題とされていて、航空会社は最も安全かつ少ない燃料で目的地まで行ける経済高度の承認を管制に求めるようになったことが関係しています。
それにより、多くの航空機の飛びたい高度や航空路がある箇所に集中し、いわゆる「空の渋滞」が発生します。
飛行機は上空で止まれないので、「空の渋滞」が発生すると航空機は管制官の指示に従い、上空で旋回待機することになります。
旋回待機するときは最低速にしますが、それでも飛行機は400-500km/hで飛び続けるので、二酸化炭素を排出し続けることになり、せっかく経済高度を飛んだとしても二酸化炭素の排出量が減った事にはなりません。
この特定の空域に航空機が集まる状況が、悪天候や滑走路の点検により実施された到着空港の閉鎖が解かれて、出発空港で待機していた航空機が一斉に空港へ向かおうとするタイミングでも発生します。
一斉に閉鎖が解かれた到着空港に向かうと、ムダな上空待機が発生するので、日本の場合は福岡にある航空交通管理センター(ATMC)が出発制御時刻(EDCT)を各航空機に対して発令し、到着空港周辺の処理能力を超えた混雑を防止します。
航空機の二酸化炭素排出削減は、環境にやさしいエンジンや炭素繊維のような素材だけでは無く、航空管制も協力しないと達成できない問題だと僕は思います。
つまり、管制指示による遅延は誰も悪くない。「みんなのため」になる
僕みたいな極度の飛行機好きでない限り、空港で20分待つか機内で20分待つか選べと言われたらば、空港で待つ方がいいと思います。
航空会社も高い燃料代をムダに使わずに済みますし、燃料を使わないということは二酸化炭素排出量を削減することに繋がります。
ここまでしっかり読んでいただいた皆さんは、管制指示による遅延の犯人が居ないことは分かっていただいたと思いますし、管制指示による遅延はみんなのためになるということも分かっていただけたと思います。
空港や機内で"Thank you for your understanding"という言葉をよく聞きますが、この経緯を踏まえた上で言われてみてください。クレームなんて1つも出てこないと思いますよ。
大手航空会社の場合、大きな遅延が発生した際には保安検査場でかざしたチケットがバウチャー券に早変わりすることもあるので、管制指示による遅延に遭遇した場合には気長に待ちましょう。
今回はここまでにしようと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
